音楽の役割

「自分にとって良い曲とは、新しい聴き方を提示してくれる音楽だ。」 -Steven Drury 10   リハーサル・コーチング(Singing Sepia)  12;30 Steven Druryと昼食 1;30  練習 2;30  Steven Drury コーチング、(ベルグのソナタ) 4    オーケストラのリハーサル("Drala" by Peter Lieberson) 6 寮に移動、夕食 7;30  マーク・モーリス舞踏団のドレス・リハーサル見学 マーク・モーリスは元舞踏家、今は振付家で、彼の舞踏団はアメリカではかなり有名だ。 音楽にとても詳しく、オペラの演出を手掛けたりもしている。 自分の舞踏団では、リハーサルから公演を通じて、録音に合わせて踊ることを主義的に禁止していて、 そのせいで時間もお金も余計にかかるが、 そのおかげで私の知人の数人はマーク・モーリス舞踏団と共演したことが在る。 音楽の演奏がその日の天気、演奏家の気分、会場の雰囲気などに影響されて変化するように ダンスもそれを反映して、自在に変化するべきだ、と言う考えからの生演奏である。 かなり著名な音楽家もこの舞踏団と定期的に共演していて、 今日演奏したヨーヨー・マや、エマニュエル・アックスも頻繁に参加するらしい。 今日のプログラムは研修生によるハイドンのホルン協奏曲ニ長調、 ヨーヨー・マとアックス氏によるベートーヴェンのソナタハ長調、 研修生によるストラヴィンスキーの「Serenade」(ピアノ・ソロ) ヨーヨーとアックス氏と未知のヴァイオリニストによるアイヴスの三重奏だった。 振り付けは非常に面白かった。 幾何学的な模様のように何人もの腕や脚が舞台の上に模様をなして、 それが音楽にぴったりと合わせて万華鏡の様に七変化する。 音楽を本当に視覚化している感じで、たとえばカノンなら、 同じ振り付けを声部の導入に合わせて、ずらして何人ものダンサーが踊るとか、 協奏曲はホルンに合わせて踊る人、オケの中のあるテーマだけを踊る人、とか 例えば音楽理論を全く知らない人でも、一目でソナタの構造がわかるような そんな振り付けだった。 ヨーヨー・マとアックス氏はどうして舞踏団と共演する選択をするのかなあ。 振り付けの都合で、音楽的解釈を妥協しなければいけないところが在る。 例えば、ベートーヴェンのハ長調のソナタは、私はこのデュオがロスで演奏するのを聴いたが、 今日のテンポは振り付けに合わせて、普通の解釈よりも、彼らのロスのテンポよりも かなり遅いテンポになっていた。 後の講義で「こういう解釈もできるかも、と挑戦されるのが面白い」とマ氏が言っていたが。。。 始めは音楽が視覚的に体現されていく目新しさが楽しくて、息を呑んで見ていたが、 段々(これはマーク・モーリスの音楽の解釈を見ているのであって、 音楽そのものを解釈と切り離して体験するのはこの方法では難しい) と思わざるを得なくなってきた。 しかし、演奏だって、演奏家の解釈と音楽そのものを切り離すのは難しい。 それでも、ベートーヴェンは私はよく知っている曲だから、 例えば普通のテンポより遅い、とか、かなりのところが分かったが、 アイヴスやストラヴィンスキーに至っては初めて聞く曲なので、 マーク・モーリスの提示する世界を鵜呑みにするしかない。 それはそれで、ただ単に音楽を聞くより、ガイドが在ってわかりやすく、楽しめはするのだが、 しかし良く知らない曲だけに、視覚に気が囚われて、せっかくの尊敬する演奏家の演奏でさえ 気がつくとダンスの二の次になってしまう。 […]

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