August 19, 2009

佐渡裕さん「僕はいかにして指揮者になったのか」

久し振りで日本語の本を読んだ。 指揮者、佐渡裕さんが1995年に34歳の時に書かれた「僕はいかにして指揮者になったのか」と言う本だ。 この本は2年ほどまえ、友達に譲り受けて、すでに読んでいた。 もう一回読んだ理由は二つある。 一つは佐渡さんの指揮者としてのブレークがタングルウッドの研修生として87年度に参加中に 小澤征爾さんと、レナード・バーンスタインに見込まれたからだが、 そのタングルウッドでの経験を、読み返してみたかったからだ。 もう一つはタングルウッドで出会ったアメリカ人のホルン奏者の一人が 現在佐渡さんが音楽監督を務める兵庫のオケのオーディションに受かり 9月からそこで仕事をするため、一生懸命日本語を勉強していたからだ。 兵庫芸術文化センター管弦楽団と言うグループは (このホルン奏者の説明で知り、今ネットで確かめたのだが) 積極的に外国人奏者を多数入団させ、とてもインターナショナルなグループになっている。 外国人団員には特別な寮が設けられ、日本語が喋れなくても不自由無いよう、 色々な気配りがされていると言う。 それでもこのホルン奏者は感心なことに毎日色々な言い回しを覚えていき 「これは日本語で何と言いますか」とか 「ごめんなさい、わかりません」 とか、事あるごとに嬉しそうに、私に日本語で発音の確認をしに来てくれた。 音楽と言うのはコミュニケーションだ、と私は信じているし、 こういう風に文化交流ができるのは素晴らしいと思う。 この本は二度目でもとても面白く読めた。 音楽にあまり関心が無い人でも、佐渡さんのおおざっぱで楽観的な生きざまは読んでて楽しいと思う。 多いに進めておきたい。 私は一日で、隅から隅まで一気に読み切ってしまった。

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タングルウッドの思い出

タングルウッド音楽祭(Tanglewood Music Center)で7週間半を研修生として過ごして、 沢山の音楽会に行き、沢山の友達を作って、10回演奏をし、5回くらい公開レッスンで演奏し、 エマニュエル・アックスや、ギャリック・オールソンや、クローデ・フランクや、ジェームス・レヴァインや、 ドーン・アップショーや、アンドレ・プレヴィンなど、今まで雲の上の人達だった人たちに 演奏を聴いて、意見してもらい、いろいろ教わった。 今は、最後の演奏会で聴いたブラームスの交響曲の2番や、 2週目に自分が演奏した自分のメンデルスゾーンの三重奏2番などが頭の中でぐるぐるなっている。 とても疲れている。 色々忘れたくないことがある。 例えば、私のタングルウッドでのあだ名が「molto espressivo」だったこと。 作曲家が「非常に表現豊かに」と指示する時に使うイタリア語の音楽用語だが、 私が音楽や食べ物の話をする時、すぐに興奮して声が大きくなり身振り手振りが入るので、 そういう風に呼ばれるようになった。ちょっと嬉しかった。 それから、打楽器の研修生でまだとても若々しい風貌の男の子がいて、 この子の前髪は鬼太郎くらい長く、ほわほわの金髪で、 彼がシンバルを叩くと、シンバルの風で前髪が「ふわっ」と真上に浮き、 それがゆっくりと元の位置にたどり着くまでに2秒位かかった。 なんだかすごく感心したイメージだった。 この子が「じゃーん、じゃーん、じゃーん」と立て続けにシンバルを叩くところでは 髪の毛も「ほわーり、ほわーり、ほわーり」ととめどなく上がったり、降りてきたりするのだけど、 その動きが、髪の毛がほわほわの為、とても優雅で、面白くて、可笑しかった。 それから「schwung」の事。 schuwungと言うのはドイツ語で、 音楽的には「(感情的に)高まる」とか、「(テンポ的に)押す」と言った感じで使われるらしい。 英語では"Swing"と訳されるようだが、ただ単に「ノル」と言う意味だけでもなく、 ノルだけよりももう少し興奮が加わった状態を表現するらしい。 ストラウスの歌曲のクラスでこの"Schwung"についての詳しい講義が在ったのだが この講義をした教授自身が「Schwung」をそのまま人間にしたようなキャラクターで 本人もそれを自覚し、誇りに思い、彼のメールアドレスも「シュヴング・マイスター」になっている。 このクラスが面白可笑しくて、大受けで、以来ピアニストの間では すべての面白可笑しいことは「schwung」になった。 例えば「I need to go schwung」と言えば「トイレ(大の方)に行ってきます」とか。。。 なんで、こんな小学生みたいなことが可笑しかったのか。 今はちょっと書くのもためらわられるが、とにかく可笑しかったのだ。 良い思い出。 楽しかった。 きつい時もあったけど、雄大な自然に囲まれて、友達と支え合って、 沢山、沢山、音楽に触れ、感じ、考え、前進しようと 皆で一生懸命暴れた。 今日は静かに過ごそうと思う。

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