October 2010

「忙しい」と言う気持ち。

「Believe me, you don’t know what "busy" means! (信じて!あなたは「忙しい」の意味を知らない!)」 今は亡きルース・ラレードと言うピアニストが日本でどれだけの知名度が在るか知らないが(今調べたらウィキに記事が在りました。)、上の言葉は彼女が私との電話の会話で言った事である。私は学部生の頃一時期彼女に目をかけてもらった事が在った。上は、私が推薦状をお願いした時に言われた事である。彼女は演奏活動とマンハッタン音楽院での教職を掛け持ちしていたし、娘がロンドンに住んでいて割と手がかかる関係だったみたいだし、不幸な離婚の傷がずっと癒えなかったみたいだし、何がそんなに忙しかったのか、分かるような気もする。けど、「あなたには絶対分からない程忙しい」と言われてしまうと、(そうかあ、私の想像の域を超えるほどの『忙しさ』と言う物が在るのだなあ)と納得するよりほか、こちらには選択肢が無い。ちなみにこの時おねだりした推薦状を彼女はちゃんと書いてくれたのだが、私は自分が忙しい、と感じるたびに(ルース・ラレードが承認してくれるくらい忙しいかな?)と考えて、思い出し笑いをしてしまう。 時間とか、お金の余裕、と言うのは実際の数では無く、気持ちの持ちようだ、とこの頃良く思う。 私は割と簡単に「忙しい!忙しい!」とパニクッてしまう方だが、私の友達の中には「忙しい」なんて一言も発さないし、遊びに誘えば十中八九乗ってくるのに何故か沢山本を執筆したり、平均律全巻丸ごと暗譜してリサイタルで弾いてしまったり、知らぬ間に南米に観光旅行に行っていたりする。どうやって時間のやりくりをしているのか、と思うけど、本人たちは別に何とも意識していないようである。 どちらかと言えば、後者を目指したい。 明日はまた指揮のリハーサルと、大きな締め切りが在ります。 でも、一応準備は全部出来ているし、ここは太っ腹に、寝てしまおう! 10時半~この頃まれにみる、健康な就寝時間。

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指揮考察、復習、作戦

土曜日の夜と、日曜日の午後、二日続けてヒンデミットのリハ―サルを振った。 色々考えの種をもらい、凄く勉強させてもらっている。有難い事だ。 ちょっとまとめ。 私思うに、指揮者の役目と言うのは二つあると思う。 ①実際的な役割;  その一)交通整理的要素。 オケ奏者と言うのは、パート譜と言うのから演奏している。パート譜に書いてあるのは、その楽器が担当する部分の楽譜だけである。例えばトランペットなど目立つか所では目立つけど休みが多い楽器などは、最初の46小節は休みで、その間にヴィオラのカデンツァ(独奏者が伴奏なしで一人語りをする所。テンポが自由で拍が分かりにくい)10小節、ゆっくりなイントロ23小節、そして早い本体がトランペットの個所まで14小節あって、いきなりソロのメロディーが一小節、さらに一小節半休んだ後でもう一度ソロが一小節在って、それからまた次の入りまで27小節待つ。指揮者はずっと振っているので、指揮棒を見ていれば今小節の中のどの拍なのか、さらにどのセクションなのか分かるし、大事な入りの所では指揮者が「今ですよ、ハイ、どうぞ!」と合図をしてくれるので、安心して吹く事に専念が出来る。特に最初のリハーサルでは、パート譜から演奏するのは言った事の無い場所に地図を見ながら運転している様なものである。特にスピードが在る時は他の車とかちゃんと見ている余裕が無いかも知れず、事故につながりやすい。指揮者は交通整理をするのである。それから音楽的効果の為に、あるいは作曲家の指示に従って、赤信号を出したり(フェルマータや、長い休符など)、交通渋滞(リタルダンド)を音楽的効果の為に作り上げたり、またはじょじょにスピード制限を上げたり(アクセルランド)、と言うのも指揮者がコントロールする。それぞれパート譜に「この音は長く伸ばす」「段々テンポを落として(あるいは上げて)」とか書いてあるが、どの程度、と言うのをコントロールするのは指揮者である。さらに、音量のバランスと言うのも「交通整理」の中に入ると思う。自分が吹いている時はその音で他の奏者の音が全く聞こえなくなる楽器も在るし、また頑張って吹いても他の楽器の音しか聞こえない楽器、と言うのも在る。オケの中で座る位置によっても聞こえてくるものはそれぞれ全く違って来る。その真ん中に立って「金管は少し抑えて」「もっと弦はボリュームアップ!」と、その日その日のホール、湿度、温度、客入りなどによって変わる音響を念頭に、音量のバランス調整するのも指揮者の仕事である。 その二)舞台監督的要素 パート譜から演奏するオケ奏者と言うのは、それぞれが自分のセリフだけが書かれた台本を手元に寄り集まって一つの劇を上演する役者の様なものである。大事な演奏会の為、あるいは皆が良く知っているベートーヴェンの交響曲など、それか勉強熱心な人はあらかじめ物語の筋を把握して来ているが、そうでない人はさっぱりである。 最初のリハーサルの段階では喜劇なのか、悲劇なのかも分かっていないかも知れない。指揮者だけが全てのパートを合わせた総譜を持っていて、練習をしなくて良い分勉強して来ている。ペース配分、究極的にどこに一番のクライマックスを持ってくるか、などの解釈に基づいた指示を出すのが指揮者なのである。例えば、「フォルテで(強く)入る」と言う指示はパート譜にも書いてある。しかし、それがガツンと怒鳴るように入るのか、あるいはたっぷりと歌い上げる様に入るのか、と言う違いは指揮者の手の動き、合図、そしてそれまでの経過で分かるはずなのである。 ②心理的な役割 その三)応援団的要素 オケで演奏する、と言うのは色々ストレスが強い。沢山の同業者と一緒に演奏する訳だが、特に最初のリハーサル、そして初演では未知の部分が多い。その真ん中に立って、交通整理、あるいは舞台監督の役割をしている指揮者と言うのは、皆に安心、勇気、闘志を与え得る立場にある。また、音楽の感情と言うの物を上手く奏者たちにコミュニケートして、オケ一体となって共感、共鳴して演奏する為のきっかけを作る、と言うのもこのカテゴリーに入ると思う。 反省としては、私は交通整理的要素の中の幾つかは出来るようになったと思うし、まだ苦手な部分はどうやって練習して上達すればいいかそれなりに把握しているつもりだ。ゆっくりなテンポでリズム感を崩さない、と言うのは凄く難しい。(ヒンデミットの「白鳥を焼く男」を御存じの方は一番最初のオケのイントロの所とか、二楽章の最初と最後、あるいは三楽章の中間部など) しかしこれは指揮棒を①たゆみ無く、②方向性を持って、③着地点がいつも予測出来るように、動かす事で達成できるはず、と言うのは頭では分かって来た。後は練習在るのみ。 舞台監督的要素と言うのも、私にはまだ総譜を勉強して筋を把握し、大体の解釈を決めるまでに物凄い時間を要してしまうが、何とか出来るようになって来ていると思う。前よりは進歩している。 一番駄目なのが、心理的要素である。自分に自信が無いのに、どうして人に自信を与える事が出来よう?でも、それは私の仕事の一部なのである。嘘でも、自信が在る振りをして、皆を安心させなければいけない。私の一番の問題は、不安になると、どうしても楽譜を見てしまって奏者を見れなくなる事だ。手だけで合図されるのと、目線と手と両方で合図されるのでは、絶対後者の方が効果的なのは当たり前である。私はもっと譜をちゃんと勉強して、ちょっとずつでも頭の中に入れられるようにしなければいけない。 次のリハーサルは火曜日の夜です。

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寝る前の意識の掃除

今日はぎっしりと詰まった日だった。 朝の7時に目が覚めてそのまま机に直行。火曜日に締め切りのプロジェクトにかかりきり。 午後12時半から5時までは博士課程セミナーの模擬就活の為のCDを プロ・ツールと言うソフトウェアを使って編集作業。 5時から7時までは息抜きで友達とタイ料理で夕食。 7時から9時までヒンデミットの初リハーサルの為、色々復習、準備。 9時から11時45分まで初リハーサルのセット・アップ(椅子や楽譜立てを並べたり、色々) そして9時半から11時までリハーサルして、独奏者と反省と片づけ。 今真夜中12時半。明日も3時から5時までヒンデミットのリハーサルが在るし、 プロジェクトもまだ色々しなきゃいけないし、CDの編集も終わっていない。 ここで寝ておかなければいけないのだけれど、指揮の興奮をどうやって始末をつけたらいいか。。。 う~ん。 ブログを書いたら、ちょっと落ち着いてきました。 本を読んで、寝ます。

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指揮!

指揮はどうしてこんなに楽しいのだろう。 明日は夜9時半から11時半まで初リハーサルが在る。 その下準備で今日、独奏者のモリーにソロの部分を弾いてもらって鏡の前で振ってみた。 モリーから「凄い!弾きやすい!一人で弾くよりずっと楽!凄く明確!」 と、一杯褒めてもらって、モリモリ勇気が湧いてきた。 出来る! これなら明日は大丈夫。 もう11時過ぎ。 今週末は過酷なスケジュールなので、安眠第一。 お休みなさい。

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指揮のレッスン復習、初リハーサルの予習

今週末土曜日、日曜日と続けて「白鳥を焼く男」のリハーサルが在る。 それぞれ2時間ずつ、丸々使わせてもらえて、実に、実に贅沢な設定だ。 今日は私の尊敬するLarry Rachleffが一緒にスコアを見てくれた。 「楽譜を勉強する時は、手を動かすな。手の動きで解釈を決めるのでなく、解釈が手の動きを決めるべきだから。」 この頃指揮の練習を一杯していたので、「じゃあ、このテーマを歌ってみて」とか言われるとどうしても一緒に手が動いてしまう私を厳しく何度も戒めた。なるほど、良く分かる理論である。 そして私が「ここの所のフレージングは?」「リタルダンドはどの程度?」と細部について質問するたびに 「歌ってみなさい ―それで完璧だよ。」 と、何度も言われた。 確かに私は頭の中で色々考えてメトロノームに合わせて手を動かす、と言う練習法で「歌う」と言うプロセスをまるっきり忘れていた。どうして分かったんだろう。声に出して歌うと、息継ぎしなきゃいけないし、それは木管・金管奏者に直接関係あるだけでなく、弓の長さにも関係してくるので、声に出して歌うと色々な意味で音楽の勢い配分が良く分かる。それから、 「ヒンデミットと言うのは観念的な作曲家では無い。実に実際的な作曲家だ。楽譜に書いてある通りに弾けば、彼が欲していた音楽に自然になってくる。やたらとひねくりまわしたり、頭を悩ませる必要のない作曲家だ。素直に演奏しなさい」 とも言われた。 ①鏡の前での練習 ②手を動かさずに歌って頭の中で解釈を確立する練習 ③メトロノームに合わせて振る練習 ④リハーサルは全てヴィデオに撮ってしっかり復習。

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