2017

女性の尊厳とセクハラの問題

(このブログエントリーは、12月2日(土)10時半FMブルー湘南78.5MHzで放映されたクラシック音楽番組『スカッとすかピア』の原稿です。) いよいよ2017年も12月となりました。今日は2017年をアメリカ在住の私の視点から振り返りながら、今年のビッグイベントにまつわる曲をお届けしてみようと思います。何と言っても2017年はトランプ政権発足の年として忘れがたいものになりました。トランプ政権は人々を分割する政策や見解を多く発信しています。例えば、移民vs。アメリカ市民、富裕層vs。貧困層、白人vs。有色人種、イスラム教徒vs。キリスト教徒、そして男性vs。女性。そんな中、巨大映画会社Miramaxの社長、Harvey Weinsteinのセクハラ暴露をきっかけにした色々な業界でのセクハラ告発は、そういう風潮への反発もあったのでは、と私は個人的に考えています。FacebookやTwitter, Instagramと言ったソーシャルメディアで#MeTooとしてセクハラの被害者たちが声を上げることで、セクシャルハラスメントがいかにたくさんの人に悪影響を与えている問題かを考えようと言う動きに火が付き、瞬く間に広がりました。男性の被害者も、もちろんいるのですが、やはり女性の被害者が多く、キャリアへのリスクを負っても告発するべきかというジレンマに立たされたという話しも多く聞きます。しかし、こうやって声を上げられるだけ、セクハラが社会問題として認識されるだけでも社会は進歩しているのだ、とも考えられます。特に音楽史を通じて、私は女性蔑視がいかに酷かったかと言うことを少し垣間見ていると思います。世界人口の半分を抑圧し、声を奪うことで、世界はどれだけの損失を出してきたことでしょう。そしてその中でも屈せず、声を上げ続けた女性たちには本当に頭が下がります。 今日の一曲目はシャミナードのフルートとピアノのためのコンチェルティーノをお届けしましょう。フルートの重要レパートリーに入っていますが、この作曲家のセシル・シャミナードが女性という事実を知らない人は意外と多いのではないでしょうか?19世紀半ばから20世紀半ばまで生きたフランス人女性です。有名な曲の作曲家は男性だと自動的に考えてしまうのも、やはり女性蔑視的な風潮の反映ではないでしょうか? シャミナードのフルートとピアノのためのコンチェルティーノを女性の社会進出を困難にする要素の一つであるセクハラ問題を考えながら、お聞きいただきました。今回の映画会社ミラマックスの社長のセクハラ暴露をきっかけにしたアメリカ各業界でのセクハラ告発と時期を同じくして、伊藤詩織の「Black Box」も「日本の#MeToo」としてアメリカでも注目を浴びています。ご存知の方も多いと思いますが、山口敬之氏を準強姦罪で告訴した若いジャーナリストが日本の強姦に関する医療関係者や警察、法律関係者の理解度や認識の低さ、レイプ被害に関する統計、レイプ被害の後遺症の苦しみ、などを客観的にレポートしている本です。前書きから抜粋します。「私が本当に話したいのは『起こったこと』そのものではない。『どう起こらないようにするか』『起こってしまった場合、どうしたら助けを得ることができるのか』という未来の話である。それを話すために、あえて『過去に起こったこと』を話しているだけなのだ。」 パリ在住の私の知り合いである佐々木くみさんの体験談をフランス人作家が小説にまとめた「チカン」も話題になっています。中学入学から高校卒業までの六年間、電車通学でチカンの被害に会い続け自殺まで考えたくみさんも、この本が出たことで「問題提起をできた手ごたえを感じている」と言っていました。被害者一人ひとりが勇気を出して、「これ以上の被害者を出さない」と言う決意のもと結束して訴え続ければ、こういう問題はなくなると信じて、私も本を書いています。 マーラーの妻として封印されてしまったアルマ・マーラーの歌曲をお聞きいただきましょう。5つのリートより、リルケ作詞『お前のそばにいるのは心地良い』です。   人間は共感し合って社会を形成し、共感し合ってお互いの人生をどんどん豊かにして生きる生き物だと私は思っています。音楽の力と言うのは、他の人の気持ちを思いやる想像力を高めて私たちをより人間らしくしてくれるからだ、と私は思っています。第九を年末に歌うのは日本のみの風習ですが、私はそれをとても美しいと思う。「人間みな兄弟」を歌ったベートーヴェンの第九からお聞きいただきましょう。共感を大事に社会形成をしていけば、差別や暴力や抑圧はなくなると信じたい。ダニエル・バレンボイム指揮、中近東のイスラエル人とイスラム教徒の音楽家を中心としたWest-East Divan Orchestraの演奏です。  

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音楽博士、参上!新しく活動展開します。

皆さまのお役に立ちたい。 社会貢献がしたい。 世界平和へ向けてのお手伝いがしたい...   私は音楽家としてユニークな特権にあやかって人生の前半を歩んできました。 13歳から渡米して世界一流の教育機関や音楽家と勉強する幸運と、音楽人生に専念する贅沢を許され、 何十年も日々精進して、美や人生、精神性や現世界について考察を重ねて参りました。 お蔭様で南米から東欧まで世界各地を演奏旅行をして自分なりの見分を深める機会にも恵まれました。 そんな私が培ってきた人生観を皆さまのお役に立てるためにはどうすればよいのか? 皆さまの日常や状況に寄り添った、より社会に関連性がある活動をするために、どのような活動展開していけばよいのか?   博士課程を取得、新天地への引っ越し、と言ういくつかの人生の転機をきっかけに これからの人生プランの考察とリサーチを数か月行いました。 沢山の本を読み、色々な方のご意見や経験談を伺いました。 そして段々見えてきていたものをここにまとめてみます。 1.持続性(Sustainability)がなければいけない。 ー 自分が好きで得意な事を、楽しみながら一生懸命やる。 ー 無理は長続きしない。経費を軽く上回る収入を確保して、初めて持続性が設立する。 2.お客様のニーズに寄り添ったサーヴィスや商品を提供する。その為のマーケットリサーチは直接お客様に尋ねるのが一番。 ー 人の悩みや問題を解決して夢や希望を叶える明確な方法を提示する 3.商品やサーヴィスの内容に一時間かけるとしたら、その広報に3時間かける。 ー そうしないといくら立派なサーヴィスや内容を創設しても、誰もそのことについて知り得ない。   簡単な様で明確に具体化し、実現にこぎつけるまでにはいろいろと努力が必要な事です。 特に3番は、クラシック音楽家として「良いものを提供していればお客様は絶対あなたを発見します。」と言われ続けて育ったピアニストとしては中々受け入れるのが難しい概念です。「スター的な売れ方をしないのは、私の選曲や演奏に問題があるからでは...」と自分自身ではもちろん思いますし、周りからも言われ続け、それを修行の燃料にもして参りました。が、調べてみれば演奏と言うのは元々お金にならない商売なんです。パガニーニは自らビラ配りをし、演奏途中の休憩時間にはチケット窓口で半額でチケットを売ったそうです。リストも自分の親友に好評を書かせました。そうしなきゃスターにはならなかったし、興行としても成功しなかったんです。 そしてそれは、演奏会と言う形態では、お客様のニーズに寄り添っていないと言うことの結果に他なりません。 でも、音楽が人間の脳の活性化や健康促進に非常な効果があることは、最近の研究で明らかになってきています。更に、私自身が音楽人生を歩んできて、音楽は私のポジティブ思考に多大な影響を及ぼしていることを証言できます。 じゃあ、どうすれば音楽の効果を皆さまに提供して喜んでいただくことができるのか? 具体的な方法はまだ模索中ですが、とりあえず私の存在を確立するために、オンラインでの活動をこれから繰り広げます。Facebookでお友達申請、「いいね!」、インスタグラムやツイッターのフォロー、さらにこのブログへのコメントなどで応援いただければ、大変心強いです。 ご質問、ご提言、お問い合わせ、なんでも大歓迎です。 よろしくお願いいたします。          

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皆さまの心に寄り添った音楽活動とは?

US-ジャパンリーダーシッププログラムのご縁でお会いすることの出来た退蔵院副住職でいらっしゃる松山大耕さんの記事です。音楽家として、皆さまの心により寄り添った活動をするにはどうすれば良いのか試行錯誤をしている自分にはとても考えさせられる記事でした。 17年間、皆さまのご支援の基、毎年定期的に日本で演奏活動を行い色々な出会いに恵まれて来ました。癌闘病を続けながら毎年「来年もマキチャンの演奏会を聴きに来れるように頑張ります」とおっしゃってくださって遂に亡くなった方もいらっしゃいます。家族の闘病を支えながら毎年演奏会に来てくださる事を家族の恒例行事にしてくださっていたご家族が、お亡くなりにご主人や奥様と「今日はデートです」と言ってお子様と一緒にいらしてくださったケースもいくつかありました。また私が帰国の度に練習をさせていただきに伺っていたお宅のご近所で介護で苦しんでいらっしゃる方が「マキチャンの練習が始まると(良く聞こえる)お庭に出て草むしりをしながら泣いた」と教えてくださった事もありました。ただ、この方々は、私が勝手にやっていた音楽活動にありがたくも癒しや家族の絆の象徴性の様なものを見つけてくださったのであって、もっと積極的に私から癒しを提供できる活動をするためにはどうすれば良いのか。それともそんな事を考えるのはおこがましくて、私は私の芸に徹すれば良いのか? 人生半ばに差し掛かり、博士課程取得など色々な節目を迎え、これから社会度の様に社会貢献をさせて頂こうか、色々考えています。カンボジアやアフリカに音楽教育に行くなどと言うお話しも在ります。それは私の見聞を広める事には違いない。そして貢献も少しは出来るでしょう。しかし本当に遠征しなければ私の音楽や音楽観・人生観は社会貢献出来ないのか?ニーズはもっと身近なところにも沢山あるような気がします。皆さまにお考えをお聞かせ願えれば幸いです。

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MATIMAのアルバム・リリースを「スカッとスカぴあ」でラジオ放送!

FMブルー湘南で毎週土曜日の朝10時半から放送されているクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」。横須賀ゆかりのピアニストグループ、スカぴあメンバーが交代で担当しています。今月は私。2週目の昨日の放送では、この夏リリースされたアンサンブルMATIMA(Matima.org)のアルバム「100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」についてお話ししました。 ご購入はこちらから!CD本体をご注文いただけるほか、ダウンロードも可。サンプル音源も在ります。https://store.cdbaby.com/cd/matima 放送用の原稿です。 『横須賀ゆかりのピアニストグループ、スカぴあメンバーが送るクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」の時間です。今月はヒューストンからスカぴあメンバーの平田真希子がお送りします。 私はほぼ2~3年おきにソロ・アルバム・リリースすることを自分に課して来ました。そして本当にお陰様で今年の夏7枚目をリリースすることが出来ました。最新アルバムは題して「100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」。1794年に書かれたベートーヴェンのピアノ・ソナタ第一番と1895年に書かれたブラームスのピアノとクラリネットのためのソナタ作品120をおさめています。 まず最初に、今年の私が日本で6月に演奏したプログラム「『天上の音楽』vs。地上の英雄」で後半に弾いた、ベートーヴェンのソナタ、作品2-1から4楽章をお聴き頂きましょう。 (アルバム『100年』より、トラック4:5分28秒) さて、今までソロアルバムをずっと6枚録音して来た私ですが、今年のアルバムではベートーヴェンを独奏している他、ブラームスのソナタで私の2011年以降の心の友でありデュオ・パートナーであるヒューストン在住の佐々木麻衣子さんと共演しています。 私は音楽の大儀の一つにはコラボレーションと言う事があると思います。例えば私が独奏したとしても、作曲家、ピアノ製作者、会場設計家、ピアノ調律師、会場のスタッフ、企画・運営スタッフ、広報係、そして聴衆の皆さんは、その音楽会とその思い出を協力して創り上げるコラボレーターです。独奏の時は特に私は、お聴きくださっている皆さんが本当に私の音楽に乗ってくださるように、「せ~の!」と号令をかけるつもりで弾く前に息を吸い込み、会場の息の根に気を配りながら演奏しているつもりです。聴衆の方には一緒に体を揺らしてもらったり、メロディーの抑揚に合わせて心の中で一緒に歌っていただきたい。独奏の醍醐味は、聴衆と直接「コラボレート」が出来る事です。 でもやはり、気心の知れ、音楽性の合う共演者と音楽を奏でる、と言うのには独創とは違った音楽の醍醐味があります。麻衣子さんとは2011年の東日本大震災の復興支援のチャリティーコンサートで協力をしてからこっちずっと色々な形でコラボをさせていただいていますが、気が合うと言うのでしょうか?一緒に弾いているとちょっとした目線や息遣いや、フレーズの持って行き方などで相手がどうしたいか、次にどう来るか、全てテレパシーの様に分かってしまうのです。考えなくても体が一緒に弾こうとして、自然と息があってしまう感じ。まずは私と麻衣子さんの息ぴったり感をアルバムからお聴きになってみてください。ブラームス作品120の1より1楽章です。どうぞ! (アルバム『100年』よりトラック5.8分36秒) どうでしょう?ご購入されたくなったでしょう?平田真希子最新アルバムwith クラリネット奏者佐々木麻衣子。題して「100 Years: Early Beethoven and Late Brahms」by ensemble MATIMA. CDBaby.com, iTunesなどで好評発売中のほか、平田真希子のライヴ、MATIMAのライブでもお買い求めいただけます。 このベートーヴェンのピアノソナタ一番とブラームスの作品120には、1794年から1895年の101年の年月があります。これは西欧変動の100年でした。フランス革命を始め政治革命も色々あります。思想革命がフランスの啓蒙主義からドイツの観念論哲学へと進み、カントが唱えた「主観的な世界と客観的な現実」のギャップを超えるためには抽象的な美の観念が必要とされ、結果歌詞の無い器楽曲が最も抽象的な芸術として崇高されるようになります。そして産業革命が人々の生活を大きく変えていきます。最初の蒸気機関車(Steam Locomotiveの頭文字を取ってSL)が走ったのは1802年だとされています。ピアノと言う楽器もこの100年でどんどん大きく、複雑に、重厚になっていき、さらに大量生産されるようになります。そして1821年『コンポ二ウム』と言う機械が発明されます。これは初期のアルゴリズムを使って2小節を組み合わせて合計80小節の曲をその度に新しく作曲する、と言う機械です。 私たちは今どんどん発展するテクノロジーの日常介入に戸惑い、色々不安を抱えています。自ら学び、人間の指示を仰がずとも決定する力を持つAIによって私たちの生活・人生はどうかわっていくのでしょうか?その現在の私たちの不安は19世紀の人々の不安に似ているのではないか、そしてその不安の中でも音楽に正直で一生懸命な自己表現を委ねたベートーヴェンとブラームスの人類愛に、私たちは思いを重ねました。 最後にブラームスのピアノとクラリネットのためのソナタ作品120の1の最終楽章をお聴き頂きながら、今日はお別れしたいと思います。ヒューストンからスカぴあメンバーの平田真希子がお届けしました。クラリネット奏者の佐々木麻衣子さんと立ち上げたアンサンブルMATIMAと、私たちのアルバム『100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス』をよろしくお願いします。 (アルバム100年:トラック8:5分29秒‐時間になったらフェードアウトしてください)」  

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原爆記念のラジオ放送…

8月5日(土)の10時半からFM湘南ブルーで放送されたクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」を担当していました。7月27日にUS-Japan Leadership Programの一巻として初めて広島に行っていた私は、その時の話と人間の強さと愛おしさについて話しました。 上で放送をお聴き頂けます。US-Japan Leadership中のカラオケの大音量をも制する大声で大議論を戦わせたりしていたので、声がつぶれています。 下に原稿をコピペしましたので、よろしければお読みになってください。 おはようございます。明日は原爆記念日ですね。実は私、10日前に生まれて初めて広島に行っていたんです。US-Japan Leadership Programは米日財団が自分たちのフラッグシップ・プログラムと掲げている企画で2001年に発足されました。ホームページUSJLP.orgから引用すると「次世代の日本とアメリカのリーダー達の間に、より緊密なコミュニケーション、友情と理解のネットワークを築き上げることを目的としています。」と書いてあります。パネル・ディスカッション、文化体験など本当に盛り沢山で、夜は朝まで飲み明かして議論やカラオケ。そんな1週間の中、木曜日は半日広島で過ごしたのです。アメリカ側から来ている20人の中にはオバマ政権で働いていた人達や、州知事の副内閣長官、国防長官の顧問、外交官、軍人、報道陣など色々な人が居たのですが、この人達と広島初体験を共にするのは、また非常に感慨深いものがありました。広島で私は感極まって「アメリカでは原爆投下は戦争終結のために必要だったと言う考えが主流だけれど、日本ではすでに降伏の条件に関する協議が行われていることを実はアメリカ政府は知っていて、それなのに広島と長崎と3日しか置かず、しかも都市のど真ん中に原爆を落とした!それなのにGHQのWar Guilt Information Programなどで戦後、日本人に物凄い罪悪感を植え付け、原爆の被害も出来るだけ報道しないようにした!」などとアメリカの参加者の一人で政府関係のお仕事をしている人にバーッと言ってしまいました。そしたら翌朝呼び止められて「自分は第二次世界大戦は全く専門外だし、昨日あなたに言われたことは自分の認識とは違った新しい見解だったのだけれど、あの後自分の知り合いの軍人に話しを聴き、さらに自分でリサーチをして、あなたが正しいと言う事が分かった。教えてくれてありがとう。」と言われたのです。涙が出るくらい嬉しかった。 人間と言うのは本当に強いと思います。広島はあんなにことごとく破壊されたのに、今は復興しています。被爆者の方々は体験を語られる時に本当に声を詰まらせて泣いていらしたけれど、それぞれが平和活動にそれぞれのやり方で携わり、アメリカ人をも含め世界中の人達に自分たちの体験を共有して、自分たちの痛みを未来の役に立てようとしてくださっています。またTBSアナウンサーの久保田とも子さんは広島出身でいらっしゃいますが、今回のUS-Japan Leadership Programにご参加なさっていて、広島の被爆者のお話しを語り継いでいくことの意義を熱く語ってくださいました。そしてアメリカ人と日本人は戦後72年を経て、1週間を共にした後、別れを惜しんで抱き合って泣くくらい、心を許し合う事が出来ます。このプログラム参加中、すごい経歴の政治家や科学者や軍人など歴史を直接創っていっている人達の中で自分に何が貢献できるのか、なぜピアニストの自分が選ばれたのか、不安に思う事もありました。でも自分のプレゼンの時、人類は通じ合いたいと思い続ける強さを持っている、音楽史は私たちにそういう人間の思い出させてくれると言いました。そして、右手を失って帰って来た軍人が左手のためのピアノ曲を委嘱した話しをして、左手のための曲を弾きました。そしたらみんな、総立ちで拍手をしてくれたのです。 その時に弾いたのは、私のアルバム「Chopin to Japan」に収録したスクリャービンの左手のための夜想曲、作品9-2です。この曲は右手を失った軍人が委嘱した作品ではなく、スクリャービンが学生時代練習し過ぎで右手を故障していたとき、自分で弾くために書いたものです。私のアルバムからお聴きください。 (Chopin to Japanトラック10、6分5秒)https://store.cdbaby.com/cd/makikohirata3 戦争から右手を失って帰って来て沢山の左手のためのピアノ曲を委嘱したピアニストで一番有名なのは、オーストリア人のPaul Wittgensteinです。ラヴェルやプロコフィエフ、ブリテンやヒンデミットにも左手のための協奏曲を委嘱、初演しました。その中でも一番有名なのは、ラヴェルの左手のための協奏曲でしょう。クリスティアン・ツイメルマン(ピアノ)、ブーレズの指揮、ロンドン交響楽団の演奏でお聴きしましょう。時間の都合上、途中のアレグロからお届けします。ジャズっぽいカッコいい曲です。 https://www.youtube.com/watch?v=WAXzynUA1hs(8分15秒から) 今日は明日の原爆記念日にちなんで、左手のためのピアノ曲の特集をヒューストンからスカぴあメンバー、平田真希子がお送りしました。私たちは強い。人間のサヴァイヴァル精神、そして何があってもコミュニケートしたいと思う人間の愛おしさ。私はそんなものを左手のためのピアノ曲に見ます。そして、原爆記念日に心を込めて世界平和を願いながら、これらの曲を捧げたいと思います。      

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