July 2009

オケ・ピアノ

7:30 起床、身支度、朝食 8;30 キャンパスに移動、練習(ピアノとチェレスタ) 10   ウェスト・サイド・ストーリー、リハーサル 12;30 復習、昼食にお友達がプレゼントしてくれたカップヌードル、款談 1;30 マーク・モーリス、声楽公開レッスン 3;30 ちょっと練習 4   28日のピアノ・アンコール曲コンサートの打ち合わせ、通し稽古 5   寮に帰る、夕食、練習 7;30 キャンパスに移動、散歩、ブラームスのドイツ・レクイエムbyボストン交響楽団(レヴァイン指揮) オケのピアノ・パートと言うのは、私は今まで何度か弾かせてもらっている。 一番最近では、バルトークの「中国の不思議な役人」のピアノ・パートを学校のオケと弾いた。 でも、オーケストラのレパートリーでピアノ・パートが出てくるのは20世紀以降の曲だけだし、 (ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」、ショスタコーヴィッチの交響曲一番、などが有名) ピアニストと言うのは一般的にソロ中心の教育を受けてきているので、 オケの中で弾く、と言う経験は他の楽器の人たちに比べてはずっと少ない。 私は演奏の機会に信じられないほど恵まれてきたので、 実は協奏曲の独奏の方がオケのピアノ・パートの経験よりずっと多い。 しかし、協奏曲とオケのピアノ・パートは全く正反対の視点で弾かなければいけない、 と言うことを今日改めて確認した。 協奏曲は、音楽学者のD.F.トヴィーに言わせると 「一般社会と個人の対立を描く、という構図が観客の気持ちに訴える」 と、言うことになる。 独奏者は、オーケストラ全部の音を抑え込むような音量、存在感、と主張を持つことを目指す。 しかし、オーケストラ内での演奏は音を溶け込ませ、 スポットライトの当たる数小節のソロ以外は、できるだけ目立たないことを目指す。 ピアノの場合、発音が他の楽器よりずっと早いので、 気をつけて、周りの音を良く聴いて、アタックのタイミングをはかる。 オケのピアノ・パートは久しぶりだったし、 大好きな曲の演奏に参加できることで興奮気味だったので リハーサルの最初では全然うまくいかなかったが、 でも、だんだん冷静に音を聞いて、ちゃんと適度なタイミングで弾けるようになってきた。 そうすると、自分の音がいつも聴いているのとは全く違って聞こえてくる。 はじめは、だんだん自分の音が聞こえないような、不安な気持ちになってくる。 でも、そのうちに、自分の出す音が他の楽器の音と一緒になって 何十倍も、何百倍もの深み、音の伸び、音色をもったような、 素晴らしい気持ちになってくる。 凄い一体感だ。 マルタ・アルゲリッチは「ソロは寂しい」と言って、 この頃は室内楽の演奏を中心に演奏活動を行っている。 私は、あんなスーパースターじゃなくて、良かったなあ、と思う。  

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凄い人たち

8;30  寝坊(やばい!)、シャワー、身支度、朝食 9;20 キャンパスに移動、練習、図書館で録音を聴く 11   マーク・モーリスのリハーサル、ハイドンのホルン協奏曲(ニ長調)のオケ・パートを弾く 12   図書館で総譜の勉強("Singing Sepia" by Tania Leon)、楽譜の整理、録音を聴く 1    ニューヨーク時代お世話になった夫婦が訪ねて来てくれる、昼食、買い物 3;30  練習 4    Stephen Druryのレッスン("Boulez is Alive" by Judd Greenstein) 5-6  明日から始まる「ウェスト・サイド・ストーリー」の練習(ピアノとチェレスタ) 6- 寮に戻り夕食、総譜の勉強の続き、ブログ 今日のハイライトは二つ在って、 一つはMark Morris(舞踏家、振付家、自分の舞踏団を持っている)に会ったこと、 もう一つはStephen Drury (特に現代曲の演奏で知られているピアニスト、指揮もする)の最初のレッスンだ。 Mark Morrisは、(今ちょっとグーグルしたらば)恐れ入るような経歴のダンサー、振付家だ。 タングルウッドにはもう何年も来ていて、生演奏に合わせて自分の舞踏団の踊りを披露する。 今年は生徒の室内楽団に加えて、エマニュエル・アックス、ヨーヨーマなどの室内楽演奏も マーク・モーリス舞踏団と共演する。 今日はそのリハーサルと言うことで、私がオケをピアノ用に編曲したものを弾き、 テンポなどのおおざっぱな打ち合わせをした。 マーク・モーリスのことはもう前から色々噂に聞いていて、 非常にユニークで、ユーモアにあふれていて、ついでにおかまさんだと言うことも 前知識として知ってはいたが、話に聞いていた以上に派手な人だった。 この前すれ違った時は、雨が降り、肌寒かったせいもあるが、 ショート・パンツとTシャツの上に非常に大きなバスタオルをマントの様に肩に羽織り、 颯爽と、ファッション・ショーで歩くように、芝生の上を闊歩していた。 色々なおかしいエピソードを聞いていたから、もう会った瞬間から笑いたかったけど、 やっぱり凄い人だった。 私はダンサーと言うのは、あまり知り会いがいないのだが、みんなそうなのだろうか。 総譜を読みながらリハーサルを聴き、 音楽楽典の知識で自分の意見を裏付けしながら、解釈について的確な意見を述べてくる。 ダンサーはこんなに音楽について詳しいのに、 音楽家でダンスのことをこれくらい知っている人がどれくらいいるか? 私はダンスのことはほとんど分からない。 そして皆に優しく、厳しい指摘の後は努力をねぎらい、 次いでに私のワンピースをべた褒めしてくれた。 リハーサルの最中に私が楽譜のページを整理するために立ち上がった瞬間に 「まあ、素敵なドレス! 見て見て、ビーズがキラキラして、とってもきれい!」 とリハーサルもそっちのけで、ドレスを褒めることに2分くらい徹してくれた。 照れくさかったが、うれしかった。 ショーが楽しみだ。 Stephen Druryについては、これからも書くと思うので、

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忙しい日、雨続き

7 起床、身支度、朝食 9 キャンパス 10 Phyllis Curtin(声楽家)の公開レッスンで共演 12 レヴァイン指揮、研究生たち演奏の「ドン・ジョバンニ」のドレス・リハーサル見学 2;30 ムソルグスキーの歌曲、コーチング(Ken Griffith) 4;30 移動、友達と日曜雑貨の買い物 6  夕食、練習 8  昨晩演奏したピアニスト、Craig Rutenbergの公開レッスンでベルリオーズのアリア伴奏 今日は忙しい日だった。 昨日の様にきちんと練習ができる日はここで触れているすべてが私の音楽の滋養になっている実感ができるが こういう風に忙しいと、なんだか「こなす」だけになっているんじゃないか、不安になってくる。 ここ、タングルウッドでは実際に「つぶしの効く音楽家」へと育成するためなのか、 兎に角色々な変化球を投げてくる。 超現代曲、声楽家や器楽奏者との共演、オケのピアノ・パート、そしてソロ、と すべてをこなさなければいけないし、 演奏会・公開レッスンへの出演の依頼がいきなり前日に来たりもする。 今日はコーチングが終わってスタジオの外に出て行ったらば 事務の人が待ち受けていて 「明日、11時からマーク・モーリス(有名な舞踏家、振付家)のリハーサルで弾いてもらいます」 と、ドサっと楽譜を渡された。 え、もしかして、試されているの? ここに招待されてくる教授陣や、客演の人は事あるごとに 「私もかつて、タングルウッドの研究生でした」とか 「タングルウッドで見込まれて、最初の仕事をゲットしました」とか言う。 雨続きで、特に忙しかった日の夜は、そんなことをプレッシャーに感じてしまったりする。 作曲家のルームメートは、今週は一日一曲ずつ毎日曲を仕上げていかなければいけない。 こういう試練が、本当に勉強になっているのか。 それともこれはテストなのか。 「ここで出会ったお友達だけでも、もう凄い財産だし、いつかこれもいい思い出になるよ。 できるだけ楽しみながら、毎日こなそう」 と、励ましてみたが、そのままそっくりのことを自分にも言ってみよう。 大丈夫、今日の公開レッスンでもちゃんと褒めてもらったし、 ズルをしないで、投げやりにならないで、ちゃんと毎日誠実にベストを尽くしているつもりだ。 それ以上のことを自分に要求しても、かえって逆効果。 できることは、やっている。 一日一歩、千里の道も一歩から、ちりも積もれば山となる。

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トーマス・ハンプトン(バリトン)のリサイタル

今日はタングルウッドで3日ある公式休みの3日目だった。 天気も良好で、湖に泳ぎに行ったグループ、映画を見に行ったグループ色々だったが ピアニストたちはこれから嵐のように続くコンサートの準備で、一日練習日だった。 夜はトーマス・ハンプトンのリサイタルがあった。 今、アメリカを代表する歌い手で、ホワイトハウスなどでも歌っているし、 メトロポリタンを始め、アメリカを代表するオペラにたくさん出ている。 ピアニストはCraig Rutenberg(クレーグ・ルーテンバーグ)で、 メトロポリタンオペラのスタッフなどとして活躍している人である。 明日、その人の公開レッスンで私はベルリオーズのアリアの伴奏をすることになっているので、 今日の演奏会は見逃せなかった。 それから、この頃研修生の歌声にすっかり感動しているが、 実は今まで私はあまり声楽に興味がなく、歌のリサイタルと言うものをあまり聞いた経験がないので、 プロの歌手、そしてプロの歌手伴奏の演奏を聞いてみたかった。 今日のプログラムはすべてアメリカ人作曲家の曲だった。 前半は有名・無名な作曲家を交えて11人の11曲を披露する。 それぞれが独立戦争、南北戦争、奴隷制度など歴史的イベントに触発された詩を元にした曲だ。 無名な作曲家の中には、政治家として活躍し、アマチュアの音楽家だった人もいる。 後半は、チャールズ・アイヴズの曲集だった。 トーマス・ハンプトンはさすがに声がいいし、発声もいかにも簡単そうだ。 しかし、演奏と言う点で言えば、私は研修生の方が感動する。 もしかして彼はあまりに美声すぎるのかも知れない。 曲の為に歌うのではなく、声を聴かせるために歌っているような気配が感じられてしまう。 勢い、すべての曲が割と同じに聞こえてしまう。 ピアニストはつけることに関しては驚異的。 明日の公開レッスンが楽しみです。

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タングルウッドでの演奏その3 & トニー・ベネット、タングルウッドを訪れる。

トニー・ベネットの知名度が日本でどれくらいのものなのか知らないが、 フランク・シナトラが“業界一の歌い手”と言った、伝説的なアメリカの歌手である。 来週83になる、その超有名人トニー・ベネットがタングルウッドに来た。 今夜演奏会をしたのだが、その直前の午後に公開レッスンもした。 私は今日1時からの声楽デュエットのリサイタルの伴奏を終えてから、 共演者たちと大急ぎで2時半からの公開レッスンに向かった。 声楽家たちはデュエットの演奏会でオペラ的に歌ってから、 衣装もそのままで今度はジャズ系の曲を歌うのだ。 それがみんなすごく上手で、声域もずっと低く、声もハスキーや、可愛系に変え 見事にガーシュウィンや、カート・ワイルや、コール・ポーターを歌った。 もうその演技力、存在感、度胸に圧倒されて、涙と歓声が同時に出てきた。 トニー・ベネットもびっくりで、ひたすら褒めまくるだけの「レッスン」だった。 皆凄いなあ。 私はそのくらいの演技力、存在感、度胸と、歌詞があるくらいはっきりした音楽的意図をもって ピアノを弾けるピアニストになりたい。 夜のコンサート、私は練習したくてお休みしてしまったのだが、後で聞いたところによると、 ベネット氏の聴衆に語りかけるような歌いくちは、全然衰えておらず、 途中歌詞を忘れてしまったりもしたそうだが 「歌詞を忘れました~♪」 と朗朗と歌い大受けしたり、すごく楽しい音楽会だったそうだ。 今も作曲家のルームメートが韓国語なまりの英語で、昨日のプログラムの曲を口ずさんでいる。

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